電車で本を読むのも、本を読む事自体も久々の事だった。
ずっと、本棚にあって、読めずにいた吉本ばななの『N・P』。

濃い。そして強烈だ。
でも、不思議としつこさはない。そんな本だった。

こんな状況は滅多に起こらない事だし、そんな知り合いもいないけれど、
だけれど、共感出来る要素は充分にあった。
だから、私はこの本が好きだった。

人を好きになる事というのはどうしようもない。
どうしようもない。

きっと、素直であればある人ほど、傷つく事も多いのではないか、と思う。
そして純粋な人ほど、より多くの人を好きになる要素があると思う。
だから、純粋で、且つ素直な人というのは、社会では少し生きにくいのかもしれない。
大人になると、人は経験から、それらを避けようとする。その方が自分のためだと知るからだ。
小さい頃は、人を好きだと思う気持ちに分別や下心なんてなかったはずだ。
好きだからもっと一緒にいたい。それが全てだったはずだ。
友達の家に遊びに行って、楽しくて、今日は泊まりたいなと思うのは顕著な例だと思う。

・・・。

本とは少し状況は違うが、もし、近い将来結婚するであろうと思っていた大好きな人が、
血の繋がった人だったと知ったら、明日からその人は恋人ではなくなるのだろうか。
形式の話ではなく、心情の話だ。
勿論、血が繋がっていると知っていて、その人を好きになる人なんて、一般的にはいないと思うが、
複雑な事情があってお互い知らなくて、ある時それを知ったら、なんて思うとぞっとする。
そんな事を考えた。

あってはならない事だ。しかしあったとして、その場合、恋人を続ける事も次の日から
恋人でなくなるという事にも、何となく私はしっくりこない。

後者の判断が正しい事くらいは頭では分かるが、
人を好きになる事は、そんなに単純な話ではないよなぁ、とも思う。

いい本だった。映画だったら泣いていただろう。

辛いな。辛すぎる。そして、強い。